かんたん作画
機械って言っちゃ申し訳ないけど……アニメーターの数は決まっている。
……アニメを制作する機械、装置の数は決まっているから、機械というのはなんだけど、
後は一人頭で頑張ってもらうしかないと思う
〜 かんたん作画 について、柳澤伯夫
かんたん作画(かんたんさくが、Simplified animation)とは、作画・動画を徹底的に簡略化することにより、作品に異次元的かつシュールな雰囲気を与える、アニメの表現技法であり、ユナイテッド・プロダクション・オブ・アメリカが開発したリミテッド・アニメーションの、日本における回答の一つである。
この表現手法は従来のアニメーションスタイル(リミテッド・アニメーション)、日本式アニメに続く、「第4のアニメーション」となるのではないかと、一部のかんたん作画研究家らは、(いい年をして)真剣に考えている。
なお、「単純に絵がどへたくそ」なものは「作画崩壊」とは呼ばない。(例:わじまさとし、ガモウひろし、西原理恵子らの作品)
歴史[編集]
[いわゆる「かんたん作画」の技法そのものは、1990年代以前にも『超時空要塞マクロス』(1982年)や『天空戦記シュラト』(1989年)の最終回付近、『ふしぎの海のナディア』(1990年)島編などにおいて、部分的に導入されていた。特に『聖闘士星矢』(1986年)では河合静男、進藤満尾、佐々門信芳の3名が「かんたん作画」を本格的に取り入れていた。特に佐々門氏は70年代からアニメ界のトップランナー(キャラデザ・チーフアニメーター)として「かんたん作画」の開発に尽力していた。
また『ナースエンジェルりりかSOS』の鳥羽厚、『おジャ魔女どれみ』のなかじまちゅうじ、『ふたりはプリキュアMax Heart』のはっとりますみの3名の優れたアニメーターは、極めて意欲的に「かんたん作画」の表現を自作に取り込んでいた。これらのアニメーターによる作画は、いずれもその斬新すぎる表現と、一度見たら忘れられない独自性により、大友の間ではカルト的な人気を博していた。しかしながら、これらの作画は研究家らを満足させるには至らず、真の意味での「かんたん作画」と呼べるものはなかった。
なお『美少女戦士セーラームーン』の安藤正浩はかんたん作画の類に数えられることがあるが、彼の場合は絵柄が同作品のアニメーターと違いすぎるために生じる違和感であって、安藤は非常に安定したよく動く、仕上げの早い作画技術を持っており、作画崩壊には含まれない。
真の意味での「かんたん作画」を、本格的に採用した最初の作品は1998年の『ロスト・ユニバース』第4話「ヤシガニ屠る」の回であると、多くのかんたん作画研究家から考えられている(ちなみに、同アニメを制作した会社は「イージー・フィルム」といい、設立者がハナっから「かんたん作画をしよう」と考えていたことが読み取れる)。ただし、これはスケジュールの破綻(スレイヤーズ時代からジャカルタ丸投げなどもあった)によるものであり、「かんたん作画」はさせまいと踏ん張っていた監督とキャラデザ夫婦は泣きを見ることになってしまった(後述「わかっております」参照)。
そして、1999年の映画『ガンドレス』こそが、「かんたん作画」を事実上完成させた記念碑的作品であると見なされている。この作品には、塗りや動画の徹底的な省略など「かんたん作画」を代表するあらゆる手法が、ほぼ完全な形で採用されていた。後にリリースされたDVD版は、通常作画版とかんたん作画版を見比べられるようにと両方収録されたオトク版になっている。
現在、アニメの制作スケジュールの過密化に拍車が掛かる中、「かんたん作画」の技法は注目を集めており、「かんたん作画」形式の最新作である 『MUSASHI -GUN道-』がYouTubeなどのサイトに転載されたことにより、「かんたん作画」は、新たなジャパニーズ・アニメーションの形態として、海外のアニメファンからも評価されている。
最近ではフィギュア界にも影響を与えており『MOCCOS』『邪神セイバー』など、かんたん作画のテイストを取り入れた作品も制作されている。
特徴[編集]
「かんたん作画」を特徴付ける、幾つかの基本的な技法が存在する。
- 作画設定の無視
- アニメーション作品においては、登場するキャラクターのデザイン統一を図るために、各キャラクターの基本的な作画設定が用意されているが、それを敢えて踏みにじることにより、異次元的な効果を作品に与える。自己主張の強いアニメーターが作画監督をした時に良くみられるケースであり、多くの場合は元の絵を期待していたファンから非難が飛ぶが、画のクセがたまらないと興奮する人種もまた存在する。
- 塗りの簡略化
- キャラクターの陰影は完全に省略され、コスチュームの細かい部分は、しばしば線画を無視して一色で塗り潰される。『ガンドレス』においては、キャラクターを事実上一色か二色のみで塗り分けるという斬新極まりない技法が採用されていた(参照)。
- 動画の簡略化
- 原画間をつなぐ動画(いわゆる「中割り」)をほとんど、あるいは完全に省略し、原画のみによるアニメーションを行う。結果として、アニメーションは秒あたり1フレーム程度のパラパラ漫画を連想させるものとなり、座っていた筈のキャラクターが次の瞬間にはいきなり立ち上がっているというように、キャラクターの動作は極めてダイナミックかつ前衛的なものとなる。これは、リミテッド・アニメーションの思想を極限まで突き詰めたものであろうことが予想できる。
- また、逆に極限まで動きを出すため、静止画を粘土人形のような酷いものにして、つなげたアニメーションの動きを表すものもある。オンエアで見ていても不自然な作画だが、録画して停止して見るとそのあまりにも酷い作画に落胆する視聴者も多い。(例:『鉄腕バーディ』、『NARUTO』他)
- 撮影の簡略化
- 撮影の際、セル画や背景パーツを省略して撮影を行う。これにより、何もない空間に小道具が空中浮遊していたり、屋内のシーンなのに外だったりなど、作品には極めてシュールな雰囲気がもたらされる。また、透過光など手間のかかる効果は完全に省略される。『MUSASHI -GUN道-』の極めて有名な、「うおっ、まぶし!」のシーンは、この技法を応用したものであると考えられている。
- 小道具類の簡略化
- 「作画設定の無視」と類似した手法。登場する様々な物品・風景等をできる限り簡略化して描画することで、まるで全く新しいものが存在しているような超次元的感覚を与えることができる。最近の作品では、『夜明け前より瑠璃色な』でのキャベツの描画がこの技法を用いた好例のひとつである。
- 管理局の白い悪魔の魔王化
- 先に言っておくが厳密にはかんたん作画ではなく「作画設定の無視」と類似した手法。かつて無茶の繰り返しで重傷を負ったヒロインが、かつての自分と同じく無茶を繰り返す教え子に対する『悲しみの表情』を、かんたん作画の手法を使用して、雛見沢症候群の感染者のように描写する。これによって悪魔が魔王へとクラスチェンジするのと同時に次の話でやたら教え子を心配しまくってるのが違和感ありありになるという、かんたん作画を上手く生かしている例の一つであると思われる。慣れてしまった目には、DVD版で普通っぽい貌に修正されたモノの方がかえって違和感バリバリになってしまい、非常に物議を醸した。単純に作画監督が「マゾヒスト」である可能性も指摘されている。
- 「あの虫ケラを見るような目がたまらねぇ」という奇特な方々が今なおかなりの数に上っており、これが次世代のかんたん作画が目指すべき方向性の一つである事は疑う余地がないだろう。なお、後半では変態博士の顔芸に力を入れすぎる余り、それ以外においてかんたん作画を余念なく導入することができた。
関連作品[編集]
- チャージマン研! - 作画崩壊が多く「気違い作画」として有名。
- 魔法少女リリカルなのは - 頼れる仲間はみんな目が死んでる(ベルカ式作画)。しかしこんなもん、以下にあげる作品に比べればまだマシである。
- ロスト☆ユニバース - アニメ版。制作元請会社「イージー・フィルム」が倒産した最初のきっかけづくり。いわゆる「ヤシガニ作画」で知られた。
- エルフェンリート - これも魅力の一つ。しかし、問題はまだ他にある。
- 鉄腕アトム - 日本初の30分番組としての連続アニメシリーズであると共に、かんたん作画の元祖でもある。特に第34話「ミドロが沼」は色んな意味で凄い。制作会社の公式サイトでも紹介あり。
- ドラえもん - 主に劇場版。
- 楽しいムーミン一家 冒険日記 - 特に終盤にてよく使われる。作画だけでなく話もかんたんになった。第1期は良作だったのにどうしてこうなった。
- クレヨンしんちゃん - 作画監督によってゴロゴロ顔が変わるのは有名(ただしこれは「作画担当の個性」で片付けられている。)。
- アークザラッド - アニメ版。静止画やシーンの使い回し等、明らかに低予算だったと思われる。余談だが原作レイプまでしている。
- とっとこハム太郎 - たまにえらい変な作画になる時がある。あとデザインが回を追う毎にキモイ頭身に。
- 機動戦士ガンダム - ガンダムの頭がやけに丸くなる。
- みなみけ - 主にシナリオ破壊も酷い第二期。
- J9シリーズ - 金田伊功や荒木姫野を起用したOPやEDは素晴らしいが、本編はアレだな!見なくてもOKだな! 因みにJ9のスタッフの多くは下記のトランスフォーマーも手掛けている。
- トランスフォーマー - 主に初代・2010・リバース・ビーストウォーズII。息をするように現れる作画ミス(例:何台ものロボットが合体して出来たロボットが、合体途中のシーンで出ている他)。よってファンにとっては「作画ミスしないトランスフォーマーはトランスフォーマーでは無い」とも言われる。
- 家庭教師ヒットマンREBORN! - 色んな意味で伝説の5話。五話寺隼人、ヤバ本、ワカメ王子の記事も参照。
- 遊戯王 - 顎…
- いちご100% - 肘…
- BLEACH - 普段綺麗な分、崩れたらもう目も当てられない例。因みにワーナー×ポニキャン版の実写映画は話が飛び過ぎたり原作改変したり、もう大変でした。
- ONE PIECE - 同上。特に放送時間がゴールデンから朝に変更されてから頻発するように。しかし小泉時代以降のキャラデザ作風が(海外でも)定着しているので、好感度はむしろ高目な方。
- るろうに剣心 - これも同上。
- バクマン。 - 単純に動かしにくい絵ではあるのだが。
- 北斗の拳 - 1期から酷かったが、2006年に製作された『蒼天の拳』は輪をかけて崩れまくっていた。何でさ。
- テニスの王子様 - 特に54話。
- NARUTO - まあ良い作画もあるんだけどね…。一時停止して見てみたらアレな絵柄になる事も(特に中忍昇格試験&飛段戦)。
- 交響詩篇エウレカセブン - 3期…。
- 創聖のアクエリオン、宇宙の騎士テッカマンブレード - 毎回キャラの顔が変わりまくる。
- 魔法先生ネギま! - 1期はもはや人間じゃない。かといって2期を完全肯定するかといえば…3期であるOADは完全肯定されるだろうが高い。
- 魔法陣グルグル - 1期の方。クレしんと大体同じ理由。
- 魔術士オーフェン - 伝説のクソ作画。スレイヤーズは少し崩れはしてもぶっ壊れはしなかったのに…
- Kanon - 2002年版(東映アニメーション版)が…。真相はYouTube等で語られたので確かめて下さい。
- 天元突破グレンラガン - もはやここまで行くと芸術の領域。でも4話目はただ下手なだけ。
- 斬 - 漫画のくせにここまで作画崩壊するとは…。エラの立体感、刀の長さ、背景全般、床のマス目など上げていけばキリがない。
- 星のカービィ デデデでプププなものがたり - 24巻第7話から。ただし作者の事情があれだったらしくそのようになったらしいが、真相は不明。
- ポケットモンスター - 初期(赤版・緑版)のポケモン画像はかんたん作画と言える。最近、BWでのサトシの顔がピカソになってしまったという噂がある。SMでは作画をかんたんにし動画を増やそうと試みる。
- ヤッターマン - リメイクもたまに酷い回があるが主に第一作。
- ひだまりスケッチ - フッジッサーン
- 咎犬の血 - 殺伐とした物語にも関わらず、全話大爆笑ものの作画。「真っ暗な中で叫び声とSEだけが響く戦闘」という画期的な予算削減案を提唱した。
- 惡の華 - 手間暇をかけた作画だが受け手には全く理解されない。作者だけには受けた。
- とある魔術の禁書目録(II、IIIを含む) - ONE PIECEやNARUTOに比べればそこまで目立たないが、それでも超電磁砲との落差がひどい。特にIIIに至っては10月放送の第1話の総作画監督(本来なら半年位前には依頼する事が望ましい)を7月に召集する程、スケジュールが破綻しておりII以上にひどい。また下記の『銀魂』4期と同じく端折られて話の展開がめちゃくちゃになった事等、作品としてかなり問題がある。
- デート・ア・ライブ - 特に3期。
- ワンパンマン - 1期は非常に素晴らしい出来なのだが、2期で多用される。それどころか、止め絵が崩れてる。
- おそ松くん - 1期。あまりにも酷すぎて原作者がキレた。
- クオリディアコード - MUSASHIも10年前。そして10年経ってもこの有様。
- DYNAMIC CHODE - 咎犬の血を超えた最狂の乙ゲーアニメと名高い。物理法則もおかしい。
- 銀魂 / 星のカービィ(アニメ版) / デュエル・マスターズVSRF / 魔法少女☆俺 - 作画崩壊を逆手にとってギャグにしてしまった例。笑ってるうちならまだ良いが、銀魂は3期以降(特に深夜枠に左遷されてからの4期)本当に作画崩壊が頻発する。
- 10本アニメ - 黒い線、どこまでも線。
- 学園ハンサム - 原作のかんたんな作画をアニメに再現しようという高難易度の試み。
- メルヘン・メドヘン - 宇宙人もびっくりの関節と動くメモ帳もびっくりのフレームレート。放映した分は円盤修正完了したので2018年末に終わったので、2019年4月から実施するつもりだが…。
- 俺が好きなのは妹だけど妹じゃない - 通称兼略称:いもいも。突然スマホがガラケーになる。あとスフィンクス。原画の少なさにインド人もビックリ!! 10話でヤリ逃げした。10話中9話が作画崩壊している異常事態(7話だけ唯一作画崩壊しなかった)。しかしキャベツ作画は思いの他まとも。
- Free!! - TV版2期。本放映当時、最終話で競泳パンツ描いてないカットがある。
- ゆるゆり - TV版3期。3年の子の顔…。
- この素晴らしい世界に祝福を!
- 銀板カレイドスコープ - 通称(略称)銀カレ。元より作業が海外送りになったり逼迫したり。アニメ版「アラン・スミシー」作品の(我が国における事実上の)走り。
- ぱすてるメモリーズ - とらのあな腐女子企画のマサオ制作アニメ。トレス厨・著作権違反と二次創作と解釈してもパロディと解釈しても下手クソで、商用でやってはいけない事のオンパレードでオリジナル性が基礎部分にしかない。しかも全話通して登場人物がかんたん作画である。円盤を大改造!!劇的ビフォーアフターで箱売りしても元取れるの?
- 咲-Saki- - 本家の原作版。作品展開が進むにつれ、いわゆる“普乳”の「奇乳」化が増えてしまったことが一時期問題に。
- パンティ&ストッキングwithガーターベルト - 普段の絵よりも作画が崩れた時のほうが絵が上手いという通称逆作画崩壊
もうさ、ぶっちゃけ飽きる位にやっているのが企画倒れ(減損会計)する位ならもうアニメ化するなよ!
何故か週刊少年ジャンプのアニメが多い様な気がするが、何、気にすることはない。
関連項目[編集]
- 原作破壊
- シュールレアリズム
- ヤシガニ
- 東映アニメーション
- 権蔵
- キャベツ
- かんたん漢字
- メディア土方
- バンクシステム - 頻繁に出てくるシーンを繰り返し使うシステム。本来は省力化のためのシステムだが、近年ではかんたん作画と合わせた手抜きとアニメ評論家から批判される場合もある。
- アラン・スミシー - かんたん作画ならぬ「かんたん実写」を専門としていたアメリカの映画監督。米国映画界からは2000年に引退したが、その前後に来日し、かんたん作画専門監督として日本アニメ界に君臨する。なお外国人アニメーターを嫌うファンを考慮し、スタッフロールでは当て字を使っている。
外部リンク[編集]
- 分かっております - かんたん作画発展の歴史を伝える、貴重な一次資料の数々。